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    特別講習No.5
    2009-08-19 Wed 13:10
    東部先輩は、自分の荷物を持ったまま、
    私を、私の部屋に案内してくれた。

    管理人室の横にある階段を上った2階の正面の部屋だった。
    ドアの横には、「特別室」と表示があり、
    その下にRueの名前が貼られてあった。

    『ここが、Rueちゃんの部屋だよ。
     中から鍵もかかるし、管理人室との内線電話もある。
     ま、池さんはあんまり管理人室に居ないから、
     役立たずかもしれないけどね。』


    と言って、笑った。
    部屋の中を覗き込む私に、

    『じゃ、俺、自分の荷物置いてくるね。
     そしたら、寮内の説明しながら寮を案内してあげるよ。
     で、荷物運ぼう。』


    そう声をかけて、先輩は隣の部屋に入って行った。

    私も、とりあえず自分の部屋に入って、机にかばんを置いた。

    『へぇ。
     さすが特別室。
     ちょっとしたホテルの部屋みた~い。』


    寮とは思えない、広い部屋だった。
    あちこちチェックしようかと思ったとき、
    ドアがノックされた。

    『Rueちゃん、俺~、東部。
     寮の案内するから、おいでよ。』


    部屋の外から先輩に呼ばれて、ドキドキする。

    『なんか、デートに呼ばれてるみたい~☆』

    一人で、ウキウキしながら

    『は~い。今、行きます♪』

    と返事をしながら、すばやく鏡を覗いて髪をチェックする。

    『よし、大丈夫。』

    寮の案内なのに、すごい気合の入れような私…。

    東部先輩は、寮内を案内と細かい寮則の説明をして、
    私の荷物を一緒に部屋まで運んでくれた。

    『この後、夕食までは自由時間だから。
     荷物、整理しちゃうといいよ。
     俺の部屋、隣だから何かあったら声かけて。』


    東部先輩は、そう言って自室に戻っていってしまった。

    『あ~ぁ。もっと、先輩と色々話したかったのになぁ。』

    そう思いながら、私は荷物の整理を始めることにした。

    ドアを開けると、コート用のクローゼットと小さな靴箱。
    その横にはトイレとユニットバス。
    その先のドアを開けると、ミニキッチンもあるワンルーム。
    ドアの正面にはテレビ。
    ドアから覗くように右後ろを見ると、ミニキッチン。
    ドアと対角線にベッドがあって、ミニキッチンと部屋を区切るように
    建てつけの家具が置かれてある。
    キッチン側が食器棚に、ベッド側には洋服がかけられるようになっている。

    『すっご~い。
     みんなそろってるんだぁ。』


    これなら、自分で家具の買い足しをしなくて済みそう。

    持ってきた荷物は、着替えやメイク用品。
    それから、勉強道具とノートパソコン。
    もともと、そんなに多くない荷物だから、夕食までには
    すっかり片付いていた。

    7時のチャイムが鳴り、夕食の時間を告げる。
    私は、初めての寮での食事にドキドキしながら、
    ドアを開けて廊下に出た。
    ちょうど、東部先輩が部屋から出てきたところだった。

    『Rueちゃん。
     部屋片付いた?』


    ニコニコと話しかけながら、隣に並んで歩き出す。

    『はい、荷物少なかったし。』

    精一杯の笑顔で答える私。

    『そっか。
     良かったじゃん。
     あ、そうそう。
     今日の夕飯、Rueちゃんの歓迎会もこめて、
     ちょっと豪華なメニューらしいよ。』


    東部先輩はそういいながら、寮生の集まる食堂に
    私を連れて行ってくれた。

    『池さ~ん、Rueちゃん来たよ。』

    東部先輩が声をかけると

    『おぉ、来た来た。
     ほら、みんな拍手っ。』


    と、管理人の池上さんが立ち上がった。

    教室でもそうだったけど、ずら~っと男子だけが並んでると
    一瞬足が止まってしまう。
    東部先輩が、そっと背中に手を回して

    『Rueちゃんの今日の席はここだよ。』

    と、テーブルの端の席を勧めてくれた。
    私が席に着くと同時に

    『いただきま~すっ!』

    と、寮生たちが食事を始める。

    『な、なんか迫力…。』

    私は、圧倒されてしまった。
    スピードと量についていけない…。
    みんなが食べてるのを見ているだけで、
    自分もおなかがいっぱいになっちゃう気がする。

    『男の子って、すごい…。』

    思わず呟いてしまった。

    ちょっと豪華メニューというデザートになったころ、
    寮生が、順番に自己紹介をしてくれた。
    一人対大勢なので、いっぺんには覚えられないけど、
    クラスメートが二人いたことだけは、確認できた。
    食べ終わった食器は、寮生が当番で洗ってしまうことになっていた。
    当番ではない寮生は、自分で使った食器を洗い場まで持っていったら、
    それぞれ、部屋に戻ったり、
    フリースペースでくつろいだりしている。

    私は、今日一日で精神的に圧倒的につかれきってしまったので、
    すぐ部屋に戻って、お風呂にお湯を入れた。

    『はぁ…。
     今日はラベンダーの香りで、ゆっくりお風呂に入ろう。』


    ベッドの上に着替えを出し、タオルをもってバスルームに向かう。

    『あ、ドアの鍵かけなきゃ。
     鍵かけないで、お風呂上りにドア開けられちゃったら、
     もうどうにもならないもんなぁ。』


    寮の生活に慣れてない私は、ついつい部屋の鍵をかけ忘れてしまう。
    鍵をかけたのを確認して、私はのんびりお風呂でくつろいだ。

    『あ~、気持ちよかった~。』

    バスタオルを巻いて、部屋に戻った私。

    『あれ?
     私、着替え出したよね…。』


    ベッドの上に出したはずの着替え。
    パジャマはあるけど、出し忘れたのか下着がない。

    『おっかしいなぁ。
     私ったら、ボケボケ。』


    独り言を言いながら、下着をしまった引き出しをあけた。

    『なにっ?
     ど、どういうこと?』


    引き出しの中身が、何もない…。
    あせってあちこちの引き出しをあけるけど、
    下着はどこにもない。

    『さっき、しまったよぉ…。』

    私は、どうしていいかわからず半べそ状態で座り込んでしまった。
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